研究概要 |
本年度は,動吸振器の減衰および個数が自励振動の大きさに及ぼす影響を実験および非線形数値シミュレーションにより明らかにした. 実験装置は,スライドベアリングで支持された弾性はりの先端に取り付けられたゴム球が,金属ワイヤで水平に支持されたガラス板の中央付近を擦る仕組みであり,これを用いて動吸振器が取り付けられたガラス板に発生する自励振動の特性を調べた.その結果,動吸振器が取り付けられていないガラス板で発生していた1次モードの自励振動は,動吸振器を取り付けると1次モードが2つに分離したうちの一方の振動モードとなることがわかった. また,動吸振器の減衰が大きくなると自励振動が小さくなることを実験的に示すとともに,同様の傾向を数値シミュレーションでも示すことができた.昨年度用いた線形の解析モデルでは減衰の増加による自励振動の安定化は確認されなかったことから,動吸振器の減衰によって系の安定化はできないものの,発生する自励振動の振幅は小さくすることができると考えられる. さらに,2個の動吸振器を1つのガラス板に取り付けて実験を行った結果,同程度の減衰をもつ1個の動吸振器を取り付けた場合よりも大きな振動低減効果が見られたものの,より大きな減衰をもつ1個の動吸振器に比べると振動低減の効果は小さかった. 実験を行った範囲では動吸振器の減衰が大きいほど摩擦振動は低減されたが,減衰の大きさには最適値が存在することを数値シミュレーションにより確認した.減衰が大きすぎると動吸振器が振動しにくくなるためであると考えられる. 以上より,動吸振器の主要なパラメータが振動低減に及ぼす影響を明らかにすることができ,摩擦に起因する自励振動の防止対策として動吸振器を設計する際の基本的な指針を示すことができた.
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