本研究では、衝突リスクの高い交差点における自動車の自動運転システムの実現を目的としている。本年度は、対向車や歩行者との衝突危険度(顕在リスク)と、知識データベースによる潜在リスクを考慮した動的リスクマップ作成手法の確立と、そのリスクを回避するための低速域の自動運転システムの実現を目標としている。電気自動車の低速域自動運転システムの実現に向けて、本年度は交差点右折時の自動運転システムに焦点をあてて、以下のことを実施した。 まず、周辺状況認識による交差点リスクマップの作成については、レーザレーダの点群により交差点内の歩行者を検出し、その歩行者の将来の運動を予測し、数秒先の自車との相対位置を推定し、ポテンシャルフィールドの概念に基づき衝突リスクマップ作成アルゴリズムを提案した。リスクマップの作成では、歩行者との衝突を回避するための規範減速度を算出し、道路固定座標上にその値を可視化したものである。 次に、超小型電気自動車を用いた交差点自動運転システムの設計については、センサ情報から周辺状況を認識・理解し、現在の運動状態と走行状況に基づき衝突回避の可否を判断する。衝突回避不可の場合はリスクに応じて減速制御を行う。自動運転の制御アルゴリズムの基本的なアーキテクチャは、右折するための経路追従制御を行う操舵制御系と、歩行者衝突回避を行う減速制御系である。前輪操舵アクチュエータと左右独立駆動モータを備えた実験車両を用いた実験で有効性を検証した結果、歩行者と衝突することなく右折が安全に行われることを確認した。
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