研究概要 |
本研究の目的は,バイオテクノロジー,医療計測分野において必要とされる,マイクロ流路中の高濃度生体微粒子群を非接触かつ安全に制御するための基礎検討である.ここでは制御のための遠隔力として,溶液中に任意のポテンシャル分布を生成可能な超音波放射圧を利用する.特に本年度は,流路中に発生させるポテンシャル制御及び微粒子運動解析を目的とした. 超音波放射圧は,線形音響現象の一種である.そのため,通常用いられる線形波動方程式の利用は適さない.そこで,非線形を考慮した,粘性流体の支配方程式を基礎としたシミュレーションモデルの開発を行った.通常,時間領域で流体力学の支配方程式を直接解くシミュレーションは多くの計算機資源,すなわちメモリ容量や,計算機間を必要とする.本研究ではそれらを効率的に利用するため,演算子分割法によるシミュレーションモデルの開発を行った. 開発したシミュレーションモデルにより,任意形状のポテンシャル生成の検討を行った.鋭い指向性及びサイドローブが小さいといった特徴をもつパラメトリックアレイの原理を応用したポテンシャル制御技術である,ビーム長抑制型パラメトリックビームの開発を行った.これは周波数及び初期位相の制御された複数のパラメトリック音源を利用することで,効率的に音場を制御する技術である.シミュレーションの結果,通常のパラメトリックビームに比べ,幅の狭いかつビーム長が抑制されたビームを発生させ,その有効性の確認を行った.このことは,適切な条件のもとで音源をすることで,サイドローブの小さいビームの発生,すなわち特定方向へのみ音場を形成できるといった利点を有する. 通常,超音波放射圧の計算において,微粒子材料のもつ弾性的効果は無視される.ただし,特たは弾性体として共振現象が異常な放射圧を発生させる.そこで,弾性を考慮した放射圧理論を基に,効率的に放射圧の計算を行う数値モデルの開発を行うことができた.
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