研究概要 |
本研究では,細胞を知的構造システムとして捉えて,細胞がセンサ,コントローラ,アクチュエータを有すると考え,機械的刺激が骨芽細胞に入力された場合の適応的応答を実験的に検証し,その動的モデルを構築することを目的とする.さらに,その結果を用いて,骨形成に効果的な機械的刺激の振動数,振幅を特定する. まず,機械的振動を入力した場合の細胞の応答を検証するために,十分な剛性を有する培養プレートに骨芽細胞を播種し,これを加振器に取り付け,培養面に対して垂直方向に正弦波加振することで細胞に慣性力による機械的振動を与えながら細胞培養を行った.細胞増殖に関しては,振幅0.5Gで一定とし,振動数12.5~1000Hzとして実験を行った結果,振動数が低いほど細胞増殖が亢進され,12.5Hzでは非振動群の約2倍となることを示した.細胞数の増加は細胞が重層化することにより生じることを,細胞核および細胞骨格の一つであるアクチンの免疫蛍光染色顕微鏡画像より示した.アルカリフォスファターゼ活性をはじめとした骨形成能の指標の遺伝子発現に関しては,振幅0.5Gで一定とし,振動数12.5~1000Hzとして実験を行った結果,50Hzに極大値が存在することを示した. 次に,細胞の動的モデル構築のために,細胞内に存在する細胞核およびアクチンを免疫蛍光染色し,細胞内の構造システムを把握した.さらに,細胞にせん断変形を与えた場合において,細胞の蛍光染色顕微鏡画像とKLT法と呼ばれる画像処理手法を用いることにより,細胞の内部構造の局所的な変化を測定し,細胞の力学特性を把握した.
|