研究概要 |
本年度は,平成22年度の機能性MRゲルの基本物性に関する検討を継続し,物性変化特性の向上及び再現性,信頼性の向上を目指した試料作製方法及び力学的評価方法の確立に取り組んだ.また,機能性MRゲルを,機械構造物を支持するマウントとして実装する場合を想定して,振動系の数値計算モデルを構築して準能動型の振動絶縁システムに関する数値的な検討を行うとともに,構造物模型を対象として準能動型制御を適用した機能性MRマウントの振動絶縁・制振性能に関する実証実験を行った.まず,力学的特性の再現性向上の点については,前年度における試料の作製方法を見直し,材料混合過程における均一性確保,硬化過程における磁場印加方法等を改良し,基質エラストマと鉄粉の混合割合に関わらず,安定した力学的特性を有する試料を得ることが可能となった.また,作製方法の改善は剛性変化率の増加にも寄与し,磁場印加時に静的・動的ともに最大5倍まで変化させることができた.続いて,機能性MRゲルをばね要素と見なして構造物を防振支持するマウントに採用し,その剛性を最大値と最小値の二値で切り替えるセミアクティブ制御則を適用して,1自由度振動系の基礎部からマウントを介して上載質量へ伝達される変位の抑制を試みた.本セミアクティブ制御手法を数値的及び実験的に検討した結果,定常外乱はもどより非定常外乱の場合においても支持剛性の切り替えによって効果的に変位の伝達率を低減できることが明らかとなった.以上より,本研究課題にて開発した機能性MRゲルは外部磁場の印加によって剛性を可変とすることのできる新たな機能性材料の一つと位置付けられるとともに,機械構造物の振動制御への応用が十分可能であることが示されたと言える.
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