電子顕微鏡内において、高周波電場を印加により生じるカーボンナノコイル(CNC)共振を観察・記録し、個々のCNCについて共振周波数およびQ値を測定した。その結果から、Q値については、個々のCNCの横弾性係数(剛性率)に依存することが示され、CNCを形成する炭素層の構造・結晶性が振動時に生じるエネルギー散逸量を強く支配することが示唆された。また、CNCの形状依存性についても調べられた。CNCの形状は、コイル径、線径、ピッチ、長さなどのパラメータがあり、振動特性には長さが最も大きく影響することが確かめられた。基板上に配向合成されたCNC中にもある程度の形状のばらつきが認められるが、この結果は、ある程度長さの揃ったCNCを用いれば、配向シート全体でおおよそ均一の振動特性が得られることを保証する結果である。 CNC1本レベルの電磁気特性を活用した新奇ナノアクチュエータとして、今年度はステッピングモータの動作原理を基にした基本機構を考案した。コイル径500m程度の密巻き状CNCを電極に架橋し、長さ500nm程度の棒状磁性体をCNC近傍へ一点支持した状態で配置した極薄型アクチュエータモデルについて、30μAの電流を流したときに磁性体ロータが十分回転可能なトルクが得られると予測された。このモデルの基本動作検証行うため、通電可能な電子顕微鏡試料ホルダのステージを改造し、架橋したCNCへの通電とナノマニピュレータによる磁性体ロータの移動・取り付けが同時に行える実験系を構築した。検証実験の結果から、磁性体ロータの作製方法や低摩擦支持方法、密巻き状のCNCを選択したときの隣接線間ショートなど、ナノアクチュエータ実現に向けて解決の必須な様々な技術要素が明確になり、さらに、それぞれに関しての基礎的知見を得た。
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