研究概要 |
介助や介護の現場のみならず通常生活において今後,ロボットが人間と接する機会が急速に増え,その必要性も超高齢化社会において日増しに高まっている.そのような環境の中でロボットに不可欠な要素として,人間がロボットと違和感なく協調作業できること(親和性)があげられる.このようなコンプライアンス特性を満足するためには,ロボットによる視触覚スキル向上が不可欠であり,また衝突による傷害を回避するためにバックドライバビリティを設ける必要がある.また,近年ではリハビリテーション向けのアシストロボットやハプティックインターフェースにおいてもバックドライバビリティの概念が重要視されている.これらの事例に共通する問題点として,アクチュエータの高減速比による関節剛性の増大と静止摩擦による伝達トルクの不連続性がある.これらのことにより人を持ちあげるような高負荷作業や衝突安全まで考慮した場合,減速比とバックドライバビリティ性能とはトレードオフの関係にあるといえる.つまり,ロボットの関節軸にアクチュエータを配置する従来の設計手法がバックドライバビリティ実現の障壁となっている.他方,ロボットと比較してヒトの身体運動においては遥かにコンプライアントな動作が可能である. このようなことから,本研究では上肢の拮抗筋構造に着目し,その構造を模倣したロボットアームの手先到達運動中のバックドライバビリティ性の評価を行った.また,拮抗型腱駆動機構を採用した場合のロボットアームの手先到達運動を例にとり,本駆動機構に適した簡潔な制御手法の提案を行った.本研究ではまず,拮抗型腱駆動機構を有する3リンク冗長ロボットアームのモデル化を行った.続けて,ヤコビ行列を用いずとも手先到達運動が実現できる制御手法を提案した.最後に,アーム手先への衝突を想定した外力を加えた数値シミュレーションを通して,提案制御手法の有効性を明らかにした.
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