研究概要 |
本研究は一般的なマニピュレータのようなコンピュータ制御による運動制御ではなく,生体の運動機構を応用した機械的メカニズムによる運動制御を解明することを試みている.特に,ここでは生体運動の最も重要な運動の一つである跳躍・着床に着目し,それを可能にする機械的モデルをヒト下肢の筋配列から構築し,そのメカニズムの機構特性を理論的および実験的に明らかにすることを目指している.そこで,平成22年度はヒト下肢のモデリングの基本原理となる跳躍・着床時の筋活動を動作筋電図学的解析により明らかにした.本解析の跳躍は足趾による離床,着床は踵による力吸収となるヒトの二足歩行と同じ条件とした.この筋電図により,跳躍と着床において,顕著な筋活動をおこなう筋群は共通しており,その筋群は股関節の一関節伸筋(大臀筋),膝関節の一関節伸筋(外側広筋など),股関節と膝関節に同時に関与する大腿部前面の二関節筋(大腿直筋),膝関節と足関節に同時に関与する下腿部背面の二関節筋(腓腹筋),足関節の一関節屈筋(前脛骨筋)であり,跳躍・着床の主働筋であることがわかった.なお,足趾による跳躍と踵による着床で発生する床反力はすべての姿勢において,鉛直上向きとなっており,ヒトの跳躍着床において床反力と運動方向が常に一致していることがわかった.これらの結果から,主働筋の機能をロボット工学的な理論解析により求めると,下肢大腿部の一関節筋と二関節筋で構成される三対6筋の機能が踵着床における姿勢安定性に,下肢下腿部後面の二関節筋である腓腹筋の機能が足趾離床による跳躍姿勢の安定性に大きく貢献していることが明らかになった.
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