研究概要 |
本研究は一般的なコンピュータ制御による運動制御ではなく,生体の運動機構を応用した機械的な運動制御を解明することを試みている.特に,ここでは生体運動の最も重要な運動の一つである跳躍・着床に着目し,それを可能にする機械的モデルをヒト下肢の筋配列から構築し,そのメカニズムの機構特性を理論的および実験的に明らかにすることを目指している.そこで,跳躍・着床時の筋活動の動作筋電図学的解析結果を基に,ヒト下肢のモデリングとその機械モデルの製作をおこなった.足趾による離床と踵による着床の主働筋は股関節の一関節伸筋(大臀筋),膝関節の一関節伸筋(外側広筋など),股関節と膝関節に同時に関与する大腿部前面の二関節筋(大腿直筋),膝関節と足関節に同時に関与する下腿部背面の二関節筋(腓腹筋),足関節の一関節屈筋(前脛骨筋)であり,この主働筋の機能をロボット工学的な理論解析により求めると,下肢大腿部の一関節筋と二関節筋で構成される三対6筋(股関節の拮抗-関節筋ペア,膝関節の拮抗-関節筋ペア,膝関節と股関節に同時に関与する拮抗二関節筋ペア)の機能が踵着床における姿勢安定性に,下肢下腿部後面の二関節筋である腓腹筋の機能が足趾離床による跳躍姿勢の安定性に大きく貢献していることが明らかになった.そこで,これらの機械的機構を装備した体幹と下肢(大腿部,下腿部,足部)の実験モデルを製作した.駆動源には圧縮バネを用い,大腿部の三対6筋の拮抗筋ペアの機構的機能および下腿部の二関節筋である腓腹筋に相当する平行リンク機構を再現した.この実験モデルを用いて,足趾による離床と踵による着床動作をおこなった結果,ヒトのような足趾による離床と踵による着床を再現することができた.これより,コンピュータ制御のような詳細な情報が無くても,機械的メカニズムによる運動制御だけで,ヒトの跳躍・着床動作が可能であることを証明した.
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