| 研究概要 |
骨や筋肉の生体組織は規則的に配列した微小な構造や繊維束などから構成されている.これらの配向特性は組織の力学特性を考える上で重要な情報である.本研究では,微小構造の集合から成る生体組織の光学モデルを確立するとともに,微小構造の配向特性を非接触で得るための評価法および評価指標の開発を目的とする.生体組織の光学的特性として,配向による複屈折性に加え,螺旋構造分子による旋光性や強い散乱が生じることが知られている.配向情報を含んだ偏光情報は散乱によって解消するため,散乱成分と偏光成分を弁別し,偏光成分から混在した光学特性を抽出する必要がある.本研究では,複屈折層,旋光層,散乱層から成る積層型モデルを透過計測における生体組織の光学モデルとして適用した.このモデルの妥当性を実験的に検証するために,生体組織と同様に光学特性が混在する生体模擬試料を作製した.ここでは,生体親和性材料として用いられる旋光性を有した結晶性ポリマーを原料として,これを結晶化させ,さらに一軸延伸することで,散乱成分と複屈折性を付与した.前年度に構築した計測装置を用いて,作製した生体模擬試料の光学特性を計測し,前述の光学モデルを適用し解析を行った.その結果,強い散乱をもつ模擬試料からも偏光特性を抽出し,それぞれの特性を弁別して定量計測が可能であることを確認した。これより,生体組織の光学モデルとして積層モデルが有効であることを確認し,さらに,本計測法による生体組織の配向特性の定量評価が可能であることを示した.
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