研究概要 |
平成23年度は,交付申請書の各項目に対応して以下の3項目について研究を行った。 1.前年度に開発を行った測定装置,電磁界計算プログラムを改良し精度を向上させ,イミュニティ劣化を事前予想するための等価回路網を解明した。回路素子の配置,各素子の値は,ネットワークアナライザから得られるSパラメタ及び,大規模計算機を用いて得られる接触不良部の詳細な電磁界分布,さらに既存設備の回路シミュレータを用いて決定した。 2.接触不良の発生した情報システムからの情報漏洩を評価するために,暗号処理を実際に行うハードウェアから漏洩電磁波をサンプリング及びそれらのデータを統計処理することで,情報システムから漏洩する情報の源となる漏洩信号源のモデル化を行った。 3.特定の機器に依存しない汎用的な評価を行うために,これまで提案を行った接触不良モデルを発展させ,接触不良の生じた情報機器のモデル化を行った。機器のモデル化には電子情報通信学会環境電磁工学研究会及び電気学会電磁環境技術委員会に出席する多くの研究者に意見を求め,放射要素に支配的な機器を構成するパラメタ(具体的には機器を構成する基板のサイズや,機器に接続される電源線や通信線の本数や長さなど)を抽出し,シンプルではあるが実機器からの放射を模擬可能なモデルを構成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請に掲げた23年度の研究計画の項目について,その全てを達成すると共に,接触不良部の等価回路網を解明する課程で,本来は実測によって与えられる回路素子の値を接触不良部における電流路と接触点の分布を仮定することで,理論式から導出可能であることを発見し,計画を大幅に越える成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに得られた知見を基に相互接続部に接触不良の発生した情報システムからの情報漏洩を評価する。この評価は,これまでの検討により得られた漏洩源の信号,情報機器はモデルを用いて行う。また,情報の漏洩はSNRに依存し大きく変化するため,測定を行う背景雑音によって情報の取得性が大きく変化し,評価の再現性が低下すると予想される。情報漏洩におけるSNRは漏洩信号と信号に無相関な背景雑音の分散比で決定されることから,当初の計画には含まれていないが,精度の高い評価を実現するため,背景雑音のプロファイリングを行い,情報機器の利用が想定される様々な環境における背景雑音分散値の分類を試みる。分類を行う上で問題が生じた場合は,雑音モデル化についても種々の議論が行われている環境電磁工学研究会に出席する研究者に意見を求める。
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