研究概要 |
ナノメートルサイズのコイル状炭素物質であるカーボンナノコイル(CNC)が燃料電池の触媒担持材料として有用であるかを評価するため,初年度の平成22年度は主として以下の3点について実験的に検討を行った。 1.ポリオール法を用いて,Pt/Ru(アノード用触媒)もしくはPt(カソード用触媒)をCNCに担持し,熱重量分析ならびに透過型電子顕微鏡による観察結果から担持状態を評価した。Pt/RuがCNC重量比に対して12wt.%程度担持できた。担持されたPt/Ruは数nmの微粒子状であり,また良好に分散していることを確認した。さらにCNCをボールミルで破砕した「破砕CNC」を用いると,Pt/Ru担持量を32wt.%まで向上できることが分かった。 2.前述のPt/Ru担持CNCまたはPt/Ru担持破砕CNCをアノード触媒層として用いた膜一電極接合体(MEA)を作製し,メタノール水溶液を燃料とした燃料電池特性を測定した。破砕CNCを用いたMEAは,これまで研究代表者らが用いた微粒子状炭素(アークブラック)よりも高い発電特性を示し,Pt重量あたりの最大電力密度(1.2mW/cm^2・mg-Pt)を記録した。 3.CNCの比表面積を向上させるべく,CNCの更なる細線化に取り組んだ。化学気相堆積法において,原料C_2H_2ガスの分圧および流量,また堆積温度を制御して,CNCの線径を10nmより細くすることができた。この細いCNCは多層グラファイトシートから形成されおり,その表面にAuやPt微粒子を担持できることを確認した。
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