研究概要 |
ナノメートルサイズのコイル状炭素物質であるカーボンナノコイル(CNC)が燃料電池の触媒担持材料として有用であるかを評価するため,最終年度の平成23年度は主として以下の3点について実験的に検討を行った。 1.DMFC電極の作製ならびに燃料電池セルとしての発電性能の評価 まず,昨年度の研究で得た触媒担持CNCを詳細に分析したところ,粒径が8.0nm程度のPtがCNCに担持されたこと,また合金化したPtとRuが担持されたことを確認した。各々の触媒を空気極(カソード)ならびに燃料極(アノード)に用いて,両電極で電解質膜を挟んだ構造の膜-電極接合体(MEA)を作製した。作製したMEAを日本自動車研究所(JARI)標準セルに組み込み,メタノールを燃料として発電性能(開放電圧,最大電流密度,最大電力密度)を評価した。 2.CNCと他の炭素ナノ材料との比較 CNC以外の炭素ナノ材料として当研究室で開発したAcB(アークブラック)とVulcanとを用い,それぞれに触媒を担持した。これら3種類の触媒について,燃料極ならびに空気極での発電性能を比較した。本比較において反対側の電極には田中貴金属社製の触媒を使用し,Pt単位重量あたりの発電電力密度を測定した。結果として,燃料極ではVulcan→CNC→AcB,空気極ではCNC→Vulcan→AcBの順に高い電力密度が得られた。 3.研究のまとめ 発電性能評価後のMEAの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ,CNCを用いた電極には多くの空隙を確認した。これはCNCを用いた電極が最も低い圧縮密度であった測定結果を裏付ける結果である。本研究結果において,電極内に空隙を有する構造を持つCNCが燃料電池電極の特に空気極に向いた材料であることが明らかとなった。
|