研究概要 |
損失の少ない高効率な回転機や変圧器などの電力機器を実現するために,高グレードの電磁鋼板を用いて実機の開発が行われているが,これら実機の損失は設計時に有限要素法などにより求めた推定値より大きくなり,高効率機器の設計を効率良く行なえていない。この相違の大きな要因は,加工時に印加される応力による鉄心の磁気特性の劣化であると考えられる。そのうえ、実機は一般にPWMインバータを用いて励磁されるため励磁波形が大きく歪むことからもマイナーループが多数発生するために圧縮応力下でのマイナーループによる鉄損の評価および推定が重要となる。 面内方向圧縮応力下での直流偏磁下における電磁鋼鈑のヒステリシスループを測定する装置の開発を行った。この装置により、初期磁化曲線上やメジャーループ上のマイナーループによるヒステリシス損が測定できる。この装置を用いて、無方向性電磁鋼鈑JIS35A360のマイナーループによるヒステリシス損特性の測定を行い、メジャーループの第一象限内に出来るマイナーループによるヒステリシス損は、初期磁化曲線上に出来るマイナーループによるヒステリシス損とおおよそ同じ値になる測定結果を得た。また、メジャーループの第二象限内に出来るマイナーループによるヒステリシス損は発生位置が1.2T以上では、初期磁化曲線上に出来るそれの値よりも2割程度小さくなる結果が得られた。しかし、いずれの条件においても、直流偏磁量が1T以上で直流偏磁量が無い場合のヒステリシス損にくらべ、大幅に増加し、直流偏磁量がおおよそ1.5Tのときにヒステリシス損増加比率は20倍程度になる結果が得られた。得られた結果より実際にはメジャーループ内のあらゆる箇所にマイナーループが発生するが、初期磁化曲線上で測定した結果をデータベースとすることでマイナーループを考慮した歪み波鉄損の推定が可能であることが明らかとなった。
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