研究概要 |
本研究の目的である,放電プラズマを用いた大気圧下での金属硬化法の実証を行った,バルスアーク方式のプラズマにより窒素原子を大気圧中で金属材料に吹き付け,局所的にサブミリメートルの深さまで硬化させる新しい窒化法を確立した.具体的な成果は,1.鋼の局所硬化に成功した2.水素ガスの添加量に最適値があることを明らかにした3.窒化に必要な水素量を大幅に低減することに成功した4.水素ガス添加による窒化メカニズムを提案した,の4項目である,これらについて以下に具体的に説明する. 1.昨年度の成果として純鉄の窒化処理に成功していたが,本年度はより実用的な合金工具鋼(SKD61)の窒化処理に挑戦した.その結果,2hの処理で100μmの深さまで硬化させることに成功した.これは既存技術のイオン窒化と同等の窒化性能と言える。 2.鉄鋼の窒化処理実験により,処理雰囲気中への水素ガス導入がきわめて重要な役割を果たしていることが明らかとなった.そこで窒化層厚さの水素ガス添加量依存性を調査した結果,水素ガスは少なすぎても多すぎても窒化が進行せず,窒化に最適な添加量が存在することが明らかとなった.この特性は実用上きわめて重要である. 3.処理雰囲気中に添加していた水素ガスをプラズマジェットの動作ガスに添加することにより,水素の反応素過程を質的に変調した.その結果,窒化に最適な水素添加量が10分の1に低減した. 4.窒化処理中のジェットプルームを発光分光分析した結果,水素添加時にはNHラジカルからの発光が顕著であり,水素ガス添加量の増加に伴いその発光は徐々に弱まることが分かった.以上のことから,NHラジカルを通して窒化処理が行われていることを提案し,さらに水素添加量が多い場合に窒化が進行しない理由はNHラジカルのドーズ量が減少するためであると結論した. 以上の成果を英文誌および国際会議で発表し,さらに現在2件の学術論文を執筆中である.
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