研究概要 |
平均的な日本人男性成人の体型をもった人体数値モデルを用いて,代表的な電流経路である手足間や両手間における人体インピーダンスを数値解析した。数値解析では複素数解析技術を組み込むことで,体内組織の導電率だけでなく誘電率をも考慮した解析を可能にした。さらに,数値モデルのボクセルサイズを小さくした場合でも対応できるよう,数値計算機の大容量化を行った。これにより,5千万要素程度までのボクセルに対応することが可能になった。 次に,欧州人体型をもつ複数の数値人体モデルを入手し,掌や足裏への電極データを手作業で作成した。電極面積による内部抵抗へ影響を調べた結果,電極面積の影響はなく電極データは十分な広さを持っていることを確認した。 以上によって,人体数値モデルにおける人体インピーダンスの数値解析を行った結果,成人男性の内部抵抗は各電流経路において1000Ω~1500Ωの範囲にあった。この結果と他機関によって報告されている測定結果とを比較すると,相対的なインピーダンス分布はよく一致していたが,絶対的な値には大きな差異があることが分かった。後者の原因の一つとして,人体数値モデルの筋肉における導電率の異方性が考慮されていなかったことが挙げられるため,これを考慮して再度解析を行った結果,両者の絶対値はある程度一致した。しかし,依然として,他にも考慮すべき要素があると考えられる。これらの結果(特に,相対的なインピーダンス分布)は,人体の全身インピーダンスを把握するうえで重要な基礎データとなり,これまでに検討されていなかった体内組織の電気的特性を再検討できる可能性もありうると考えられる。
|