酸化亜鉛(ZnO)を用いた高効率・高輝度発光(紫外)半導体デバイスを実現するうえで、基板上に良好な成長膜を形成する必要があり、それを得るためには膜と同じ材料の高均質なバルク基板を用いた膜成長(ホモエピタキシー)が理想的である。しかし、このバルク単結晶は開発途上の段階であり、導電性(抵抗率)の分布が生じる問題があるため、膜の品質に大きな影響を与えることが予想される。将来的により均質なバルク単結晶基板および成長膜を作製するうえでは、基板面全体を評価する技術も重要となる。そこで本研究は、精密な超音波計測技術を拡張して、抵抗率評価法を開発し、ZnO単結晶および薄膜評価のための基盤作りを行なうことを目的とする。 本年度は、抵抗率の異方性について誘電率に導電性(抵抗率)を導入した計算モデルと実験的検討を行った。ZnOの属する結晶系の抵抗率はρ11とρ33の2つが定義できる。そのため、ρ33しか関与しないZ伝搬縦波音速の周波数依存性の測定と、ρ11とρ33の両方が関与するZ-cut 漏洩弾性表面波速度の周波数依存性を測定し、各速度の分散性からそれぞれの抵抗率を独立に求める手法を開発した。誘電緩和の生じる周波数帯では減衰のピークが観測されるため、速度情報だけでなく減衰情報も重要な評価パラメータとして利用できることを明らかにした。また、精密な音響特性の広範囲温度特性測定を行うための計測法の検討を行った。水熱合成法により育成されたZnOバルク単結晶に対し、音響特性の温度依存性の測定を行い、高抵抗単結晶、低抵抗単結晶に対する基礎的音響特性を得た。また、超音波計測による均質性評価から、+Z面と-Z面では-Z面で低抵抗となりやすいことを実験的に確認した。また、ドーパントを行ったZnO膜に対する漏洩弾性表面波伝搬特性分布を計測し、ドーパント依存性についての基礎データを得た。
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