本研究は、半導体ナノワイヤ(NW)形成およびNWを用いた電界効果トランジスタ(NW-FET)作製技術に関するものである。エピタキシャル成長として分子線エピタキシー(MBE)、基板面としてGaAs(110)、NW材料としてInAsに焦点を絞り、選択成長により(110)面内の<111>B方向に沿った並列NWの形成を行った後、プレーナー型リソグラフィーを用いて平面型並列NW-FETの試作を行う。試作NW-FETの真性特性やNW中の電子・スピン輸送特性の解明を進め、ナノデバイス物理の理解およびナノデバイスの高性能化・集積化の端緒とすることがねらいである。 本年度は、MBE選択成長によるNW形成技術と、NW-FETプロセス技術の開発に重点を置く計画としたが、研究開始当初に使用するMBE装置の状態が思わしくなく、状態改善を行った後に前者のみの実施となった。まず、先行研究として報告のあるGaAs(001)および(111)B基板を用いて、ハイドロジェンシルセスキオキサン(HSQ)を用いたマスク基板作製と選択成長条件の検討を進めた。その結果、HSQマスク上の堆積なしにGaAs開口部からInAsが選択的に成長する条件を得ることに成功し、さらにNWの形成条件も得ることに成功した。続いて、得られた条件下でHSQ/GaAs(110)マスク基板上のMBE選択成長を行った。その結果、(110)面内の<111>B方向に沿ったInAs-NWを得ることに成功した。これまで(110)面内へのNW形成の報告はなく、新規性の高い研究成果であり、平成23年度開催予定の第15回半導体超構造国際会議(MSS-15)に採択されている。ただし、面外の<111>B方向にもInAs-NWが成長しており、また面内にある2つの<111>B方向に対しての制御ができておらず、開口形状などマスクの改善を今後も進める必要がある。
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