研究概要 |
本年度はPbTiO3の基本組成で、自己組織化ナノ結晶の育成技術の確立を目指した。並行して、基礎的な評価・解析である結晶構造解析とサイズ効果の解明に取り組んだ。 単結晶基板(サファイア)を熱処理して原子レベル平坦基板を作製し、斜めスリットを配置したスパッタ装置にてナノ結晶育成を行う。材料としては、基本的な材料であるPt,PbTiO3である。作製条件として、(a)基板の種類、(b)下部層の有無、(c)基板加熱温度、(d)スリット角度、(e)堆積レートと時間、(f)スパッタガス分圧、(g)組成、を変化させて、得られるナノ結晶の形態変化を調べ、成長様式に関する知見を得つつ、任意の仕様のナノ結晶に対する最適条件を調べた。得られた試料はまず結晶構造を調べ、所望の構造であることを確認する必要がある。薄膜ではX線回折(XRD)で容易に確定できるが、ナノ結晶では感度的に困難であったので、放射光施設(Spring-8)の高強度X線にてXRDやX線吸収微細構造を測定し、結晶構造解析を行ったところ、PbTiO3はペロブスカイト構造になっており、PbTiO3,Ptとも通常の薄膜では考えられなかったような高い配向性が得られていることがわかった。さらに、走査プローブ顕微鏡に導電コート探針を装着し、電気計測器と接続して調べたところ、Ptナノ膜については、単層膜にもかかわらず十分な電気伝導性を有していることを見いだした。さらにその上にPbTiO3ナノ結晶の作製も成功したので、現在、その評価を進めているところである。
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