研究概要 |
Cu(In,Ga)Se2は薄膜太陽電池材料として非常に有望である。しかしながら、Gaの組成を増やしバンドギャップを最適値の1.4 eVに近づけると太陽電池の効率が低下する。この問題の解決のため、GaAs基板上に成長したCuInSe2 (CIS)/CuGaSe2(CGS)歪補償超格子の光吸収特性の理論的評価を行った。 GaAs基板への格子整合に近い組成として(CIS 1 nm)/(CGS 3 nm)を単位構造とした超格子およびIn組成25%のバルクCIGSを選び、吸収率を評価した。CIS/CGS超格子は1.4 eV付近に吸収端を持つこと、吸収端近傍には2次元系の励起子吸収に特徴的な非常に強い吸収が現れることから、超格子の導入により吸収効率が28%向上する。この結果は、CIS/CGS超格子はCIGS系太陽電池の高効率化に有効であることを示している。 これまでに、AlAs/GaAs超格子にX点における電子伝導を導入し、直接遷移型の光吸収特性と間接遷移型AlAsの伝導特性を併せ持つ新たな太陽電池構造を提案した。本年度は、多接合型太陽電池への応用を考え、GaAsに格子整合し、AlAs/GaAs超格子より大きなバンドギャップを持つAl0.52In0.48P/Ga0.51In0.49P超格子理論解析を行った。 AlInP層の厚さを2 nmに固定し、GaInP層の厚さを変化させると、GaInP層2 nm以下ではΓ点の量子化準位がX点よりも高くなることが明らかになった。超格子構造におけるサブバンド準位は、Γ点の2.09 eVに対し、X点は2.07 eVとΓ点に比べ20 meV低く、実効的なバンドギャップは2.16 eVとなる。このことは、AlInP/GaInP超格子がX電子伝導を用いた多接合太陽電池の製作に有効であることを示している。
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