研究課題
本研究の目的は、炭素原子1層~数層から成るグラフェンを用いた単電子トランジスタの高温動作化の探究および単電子論理回路の基本動作実証である。本年度の成果目標は、まず単電子トランジスタの高温動作化に重要となる高いトンネルバリア形成手法の探究と、単電子トランジスタの安定した作製手法の開発である。これらを達成するために本研究では集束イオンビーム(FIB : Focused Ion Beam)を用いてグラフェンに直接ナノスケールの加工を行った。まず、へき開法によってSiO_2/Si基板上に貼付したグラフェンを電子線描画装置と反応性イオンエッチングを用いて幅1μm、長さ5μm程度の長方形に加工し、その後電子線描画装置と電子線蒸着装置で加工したグラフェンの両端にソースドレイン電極を作製する。これらを複数個作製し、幅1μmのグラフェンに対してFIBを用いて局所的に加工し、幅40nm程度から300nm程度まで20nm刻みでナノギャップ加工を行った。FIB加工を行ったグラフェンを室温・低温測定した結果、ギャップ幅が300nmから100nm程度まではオームの法則に則って抵抗値がギャップ幅に反比例したが、ギャップ幅が100nm以下になると、急激に抵抗値が増大する結果が得られた。この現象は量子効果によるトンネル現象を反映した結果であり、FIB加工によってトンネルバリア形成が可能であることを実証したものである。この結果は、FIB加工によるグラフェン単電子トランジスタの作製に大きく繋がるものであると共に、グラフェンのトンネルバリア形成の新たな手法を確立した重要な成果であると考えている。
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Applied Physics Letters
巻: 98 ページ: 093113 1-3
10.1063/1.3560467
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Science and Technology of Advanced Materials
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