本研究課題では、コレステリック液晶を光ファイバのコアとした構造を作製し、コアの光閉じ込めを利用した高効率な光共振器の実現を目的としている。 本年度は、コレステリック液晶コアをもつ光ファイバの作製を中心に研究を行った。内径60μmのフッ素樹脂チューブおよび内径50μmの中空ファイバへコレステリック液晶の注入が可能なことを実験によって確認した。実験開始当初は、極めて細いファイバということもあり、顕微鏡観察による液晶の配向状態の確認が困難であったが、外部照明光源を用いることで、通常の液晶セルでは見られないコレステリック液晶ファイバ特有のテクスチャーの角度依存の観測に成功した。そのコレステリック液晶コアをもつ光ファイバの顕微鏡テクスチャーの角度依存性を解析するためにFDTD法(時間領域差分法)を用いた光伝搬シミュレーションを作成した。シミュレーションからコレステリック液晶ファイバのテクスチャーは螺旋構造からの回折により生じていることが判明した。更に、シミュレーション結果と実験結果の比較から、コレステリック液晶の螺旋がファイバのコア内で同心円状に螺旋軸を持つ構造をとっていることが明らかとなった。これらの結果から、コレステリック液晶をキャピラリ構造の中に注入すると、通常の液晶セル構造とは異なる同心円に螺旋軸をもつ構造をとることがわかった。本年度の成果としては、一次元周期構造をもつコレステリック液晶がキャピラリ構造内では擬2次元的なナノ周期構造をとるという新たな知見を得ることができた。これらの成果は国際会議ならびに国内学会で発表した。
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