研究概要 |
本研究の目的は,動脈硬化の主原因となる血管内膜の沈積コレステロールプラークの分布状態を分析可能な血管カテーテル状プローブを実現することにある.分析手法として,コレステロール等の分子構造を分析可能なフーリエ赤外分光法を用い,また赤外光を血管内に導入するデバイスとして,申請者らが開発してきた中空光ファイバATRプローブを使用することにより,血管内膜の吸収スペクトルを測定可能な装置を開発する.今年度においては次の2つの事項について検討を行った. 1.ATRプローブ測定系の構築 ATRプローブを用いた測定系を構築し,その基本特性の評価を行った.FT-IRから外部に取り出した赤外光は中空ファイバ入射端に結像される.ファイバを伝送した光はATRプリズムで全反射され,HgCdTe検出器でそのスペクトルを測定する.プローブの可とう性を向上させるために従来の直径2mmのファイバを1mmへと細径化することを試みた.光量の低下により若干SN比が低下するものの,光学系の改良やファイバ特性の改善を行うことにより,スペクトル測定が可能となった. 2.生体サンプルの測定とカテーテル評価 上記項目で構築した測定系を用いて生体の反射スペクトルをインビボで計測することを試みた.対象とする成分は糖尿病の指針となるグルコースを選択し,プローブを用いて口腔粘膜を測定することにより,グルコースの血中濃度の測定を行った.その結果,数%の濃度変化の検出に成功したが,プローブの押付圧力により出力強度が大きく変動することが問題となった.この問題を解決するために,基準ピーク値による校正や基準となる成分の添加などについて検討を行った.
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