研究概要 |
がんの温熱治療とは,がん細胞が正常細胞よりも熱に弱いことを利用したがん治療の一つである。この治療法の成否は,患部をいかに効率よく加温できるかに左右される。本研究では,内視鏡に装備されている鉗子孔に挿入し胆管部を非侵襲で効率的に加温可能な微細径フレキシブルマイクロ波アンテナの実用化に関する研究を行う。本年度は,まず,以前に行ったブタ胆管に試作した上記アンテナを挿入し加温した際のデータを詳細に解析し,血流存在下でのアンテナへの投入電力と温度上昇の関係を考察した。この結果,血流による冷却効果は当初考えていたよりも大きく,患部の加温を行うには,比較的大きな電力が必要であることがわかった。そして,それらの結果を踏まえて,アンテナ直径やその耐電力などを決定した。また,本年度導入した実際の臨床現場で広く使用されているマイクロ波治療器の使用法を習得し,その特性を把握した。さらに,胆管内視鏡を日常的に診断・治療に使用している医師と詳細な意見交換を行い,ヒトに対する臨床使用に耐え得るアンテナの基本設計指針を見出した。その上で,アンテナの試作を行うにあたり,その電気的特性だけではなく,医師が扱いやすい硬さや表面コーティングなどを,生体適合性材料のみを用いていかに実現するか,既存の医療用具を参考にして検討を続けた結果,アンテナ試作に向けたおよその道筋をつけることができた。次年度は,これらの成果をもとにして,実際にヒト胆管部腫瘍の温熱治療に使用可能なアンテナを製作することを目的とする。
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