研究概要 |
がんの温熱治療とは,がん細胞が正常細胞よりも熱に弱いことを利用したがん治療の一つである。この治療法の成否は,患部をいかに効率よく加温できるかに左右される。本研究では,内視鏡に装備されている鉗子孔に挿入し胆管部を非侵襲で効率的に加温可能な微細径フレキシブルマイクロ波アンテナの実用化に関する研究を行う。本年度は,昨年度の検討結果をもとにして,臨床使用可能なフレキシブルマイクロ波アンテナの試作を行った。試作にあたっては,"臨床使用時に衛生状態を維持できる"・"医師が操作しやすい"といったような観点からもさらに検討を行った。現在は,試作したアンテナを臨床使用するために,医療機関の関係者と相談を重ねている。 一方,現在の胆管部腫瘍の治療では,狭窄した胆管を拡張するために金属ステント留置が行われることが多い。この場合には,留置直後は胆管狭窄による諸症状の著しい改善が認められるものの,数か月後には,腫瘍細胞の成長により再狭窄が生じることが多い。こういった場合に,マイクロ波による温熱治療を行うことができれば,その効果が期待できる。しかし,金属ステントがマイクロ波を遮蔽するため,金属ステント内にアンテナが挿入された場合には,効率的な加温ができないことが明らかになった。そこで本研究では,マイクロ波を遮蔽しない金属ステントの構造について基礎検討を行い,いくつかの知見を得た。これについては,研究期間終了後も検討を続けていく予定である。
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