本研究では、個人レベルで生活環境における各種化学物質のその場(on-site)計測可能とし、環境医学的な見地から健康的な生活環境の構築を支援するためのガスセンシングデバイスを提案することを目的とし、生化学式のガスセンサの開発を行った。この目的には、1ppb以下の超高感度にて、環境中のガスを選択的・連続的に計測する技術が必要となる。そこで、モデル成分として各種の製品群から環境中に放出されるホルムアルデヒドを対象とし、高輝度紫外線LEDと各種の光学フィルタ、光電子増倍管、多分岐の光ファイバ及び光ファイバプローブからなる小型のNADH蛍光検出型用光学系を構築し、プローブ先端に酵素固定化膜を有するフローセルを装着することで、生化学式のバイオセンシングシステムを構築した。本センサはホルムアルデヒド脱水素酵素の反応により生成される還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を、上記の光学系にてモニタリングする。 平成23年度は、特にセンサの高出力化及び、応用展開を念頭においた検討を行った。昨年度に行ったギ酸脱水素酵素を用いた高出力化では、ギ酸など一部の化学物質に対する選択性が低下する課題があったが、LEDの並列化など、新たな光学系の検討を行うことで、選択性を犠牲にすることなく高出力化が可能となった。また本センサを用いて環境中のホルムアルデヒドの低減措置を実施した際の効果をリアルタイムに計測する手法について検討した。この結果、本センサが環境中のホルムアルデヒドの動態をリアルタイムに計測できることが確認され、発生源の追跡など健康環境の構築に有用であることが確認された。
|