腎臓結石を破砕する等、体内に挿入して使用する赤外レーザ複合光伝送システムには、半径40mm以下の曲げに耐える大きな機械的強度をもつ中空ファイバが必要とされる。しかし従来の中空ファイバの製法では、石英ガラスキャピラリー内面に銀薄膜を形成する際に使用する溶液中の水分が、石英ガラス表面の微小欠陥成長を助長することがあり、充分な強度を有する中空ファイバを製造することが難しい。そこで、本研究では、この強度劣化を防ぐための新しい手法を提案し、その効果を実証する。先ず最初に、石英ガラスキャピラリーに保護膜として無機薄膜を成膜し、ついで従来採用されていた手法により、無機薄膜内装中空ファイバを製作する。 1.保護膜に無機膜を用いた高強度中空ファイバの製作 ガラスキャピラリー(内径0.7mm、長さ1m)内部に、全液相法を用い、保護用無機膜、銀膜、低損失化用無機膜を0.1~0.9μmの厚さにコートする。保護膜と銀膜を成膜し、中空ファイバの強度について調べた。中空ファイバを目標の曲げ半径15mmで360度回転させても破断することはなく、曲げに対して高強度な中空ファイバの製作に成功した。 2.赤外レーザ複合光伝送用中空ファイバの設計と製作 Er:YAGレーザ光とHo:YAGレーザ光を低損失に同時伝送を行うために、無機膜の厚さを数十nmオーダーで精密に制御する必要がある。ファイバの長手方向に均一な厚さを有する無機薄膜の成膜を行った。 3.任意赤外波長帯伝送用無機薄膜形成材料の調査 保護膜用無機膜として、室温硬化型特殊無機塗料のOCクリヤーNo.300が有効であることが分った。
|