腎臓結石を破砕する等、体内に挿入して使用する赤外レーザ複合光伝送システムには、半径40mm以下の曲げに耐える大きな機械的強度をもつ中空ファイバが必要とされる。しかし従来の中空ファイバの製法では、石英ガラスキャピラリー内面に銀薄膜を形成する際に使用する溶液中の水分が、石英ガラス表面の微小欠陥成長を助長することがあり、充分な強度を有する中空ファイバを製造することが難しい。そこで、本研究では、この強度劣化を防ぐための新しい手法を提案し、その効果を実証する。先ず最初に、石英ガラスキャピラリーに保護膜として無機薄膜を成膜し、ついで従来採用されていた手法により、無機薄膜内装中空ファイバを製作する。 1.高強度無機薄膜内装銀中空ファイバ伝送装置の構築と評価 焦点距離71mmのCaF_2レンズで集光し、結合ファイバ(内径0.7mm、長さ15cm)を通して、高強度無機薄膜内装銀中空ファイバ(内径0.7mm、長さ1m)に入射し、中空ファイバの出射端を一定の曲げで曲げEr:YAGレーザ光(パルス幅300μs、繰り返し周波数5Hz、エネルギー129mJ)に対する伝送特性の評価を行った。曲げ半径15mmでも折れず、270°に曲げた際にも曲げ付加損失は1.5dB程度であった。直線状態における伝送損失は約2dB程度であった。 2.2波長破砕用無機薄膜内装銀中空ファイバの結石破砕への応用 Er:YAGレーザ光とHo:YAGレーザ光を同時に伝送可能な無機薄膜内装銀中空ファイバを用い、曲げ角270°、曲げ半径15mmの状態でモデル結石(アルミナボール)に照射した後の破砕量を測定した。照射時間は、30分とした。Er:YAGレーザ光による破砕量は0.07gであった。Er:YAGレーザ光の照射エネルギーは約50mJ、繰り返し周波数10Hzである。曲げ状態で破砕することに成功した。
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