今年度は前年度の研究を踏襲し、以下の3項目に関してより深く研究を行った。 汎用的且つ高精度な自動最適設計システムを構築するためにはAVM(Adjoint Variable Method)以外の最適手法の検討も必要である。本年度は昨年のGA(Genetic Algorithm)に加えてPSO(Particle Swarm Optimization)に関する基礎的な研究を行い、アンテナ最適設計適用への可能性を見出した。 AVMを応用した最適設計システムではアンテナ放射パターンを最適化する場合、放射電力を観測するための閉曲面をアンテナの外側に設置する必要がある。その閉曲面、即ち観測面ではアンテナ形状をパラメータとしてFDTD計算によって得られた放射電力から目的関数が計算される。しかし、一般的にアンテナの近傍で観測された放射パターンは無限遠方で観測されるそれと異なる。そのため、アンテナからどの程度離れれば無限遠方と同等の放射パターンが得られるか把握する事が重要となる。本年度の研究では、一般的なセダンタイプの普通乗用車をターゲットとして自動車搭載UHF帯アンテナにおける有限距離と無限遠方の電界パターン差の距離特性を定量的に評価し、その特性を明らかにした。 MIMO技術等を用いた高性能アンテナの開発及び評価においては、リターンロス、放射パターン等の基本的なアンテナパラメータだけではなく、実際の移動体通信環境におけるマルチパスフェージング、電力遅延プロファイル等を考慮した設計が重要となる。本年度の研究では、具体的な見通し外環境として700MHz帯車車間通信のための住宅地交差点における電波伝搬特性の解析、地上波デジタル放送のための市街地道路上におけるUHF帯電波伝搬特性の解析を行った。
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