研究概要 |
本研究課題では,UWB MB-OFDMシステムにおける周波数共有する共存無線システムの検出を行う.この研究課題は,UWBシステムの実用化において最重要課題として位置づけられている.提案する干渉検出手法では,想定される共存システムの占有帯域に基づく干渉モデルを導入し,観測信号とのモデルマッチングを行い,共存システムの存在の検出が可能となる.提案手法は従来手法で必要であった閾値の設定を自動的に行う機構を組み込み,様々な干渉パターンに柔軟に対応可能である.このために,まず,観測信号に対して,MB-OFDM方式と同じ128点DFT処理を行い,周波数領域信号を得る.次に,簡易なエネルギー検出と同様に,周波数成分毎に二乗積分処理を行い,エネルギー観測値を得る.観測エネルギーレベルの高い順に,干渉信号が存在するか否かのモデルが作成される.この時,干渉が存在しないとするモデルも入れて,全部で128種類の干渉モデルが構成可能となる.この観測値を用いて想定した干渉モデルに基づいて,最尤法により,干渉成分と雑音成分の推定を行う.これらの推定値はモデルの数分得られるが,この中から赤池情報量基準に基づいて最適なモデルが選択され,干渉信号の推定が行われる.本提案手法における検出回路構成は,標準的なMB-OFDMシステム受信機と共用部分が多いため,実用化が容易である.これまでの検討の結果,モデル作成時に,厳密な分布を想定すると閉じた形で解が求まらないが,中心極限定理に基づくガウス近似を導入することで,容易な形式で干渉成分と雑音成分の推定が行えることが明らかになった.これにより,安価である必要があるUWBシステムにおけるハードウェア実装コストを小さく抑えることが可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度,23年度おいて,本研究課題に関する研究発表として,国際学会3件,国内学会4件の発表を行っており,平成24年度においては,さらに検討を進めて,学術雑誌2件と国際会議1件の準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に関連が非常に深いUWB DAAの分野において,近年,主にヨーロッパで検討されているflexible DAAでは,干渉信号の存在のみではなく,そのレベルも測定することが重要であると認識されている.提案手法では,従来の干渉検出手法と異なり,原理的に検出した干渉信号のレベルを測定することも可能である.そこで,平成24年度では,さらに発展的な検討として,干渉検出のみならず,干渉信号レベル推定の精度についても検討する予定である.
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