研究概要 |
本年度は,まず昨年度に引き続き動画像における動き予測の高速化,及び動きベクトルの再構成による予測フレームの画質向上を行った.動き予測の高速化においては,動画像符号化標準であるH.264/AVCの複数フレーム動き予測に基づき,動き予測の際に適切なしきい値を用いて,過剰な動き予測の探索を打ち切ることにより高速化を図った.結果として,H.264/AVCで利用されている高速全探索法(fast full search)と比較し,符号化性能の劣化がほとんどなしに全符号化時間の10%程度の削減を実現した. また,予測フレームの画質向上に関しては,従来のフレーム補間手法を利用して推定されたフレームより,再度実在フレームを利用した動き予測・動き補償を行うことにより,・予測フレームの更なる精度向上を図った.結果として,従来のフレーム予測手法と比較してピーク信号対雑音比で5dB弱向上という大きな改善を達成した. 時空間平面の切り出しに関しては,前年度まで行なっていた2次元平面におけるオプティカル・フローの抽出を発展させ,3次元信号である動画像中において曲線を抽出する手法を実現した.更に本手法を動画像のリサイズ・画像符号化へと応用した.結果として,良好な動画像のリサイズ(retargeting)結果を得た,本研究の目的である時空間平面の抽出は,将来の動画像符号化標準への提言としては未だ道半ばであると言えるが,今後の発展が大いに期待できる成果を達成した.
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