研究概要 |
本年度は,スペクトル観測に基づく電力制御による周波数共用法の開発,高精度で柔軟なプライマリユーザの占有率推定法,協調スペクトラムセンシングにおける効率的な観測情報収集法,そして周期定常性を用いた新しいスペクトラム利用状況の識別法を提案してきた。以下に,それぞれの概要を示す。 1:スペクトル観測に基づく電力制御による周波数共用法 電波伝搬モデルのモデル化を行い,それに対する送信電力制御に基づく周波数共用法の検討をまず行った。これにより,プライマリユーザの配置情報,セカンダリユーザの配置情報を持たずに拘束条件(プライマリユーザへの干渉電力に基づき設定したアウテージ確率)を満たしつつ、セカンダリユーザが効率的に周波数共用が実現可能であることを示した。 2:高精度で柔軟なプライマリユーザの占有率推定法 プライマリユーザの占有率を柔軟・高精度で推定する手法の開発を行った。占有率の推定には,簡易な電力検出を用いた。この場合,ノイズレベルに対して適切に閾値を設定することが課題となる。そこで,ノイズレベルをブラインドで推定する手法の提案を行った。これにより,ノイズ不確定性・ノイズレベルの時間変化に対してもロバストに占有率を推定することが可能となった。また,この手法は,プライマリユーザの周波数帯域幅が変化してもしれに対して追従可能であることが特徴である。 3:協調スペクトラムセンシングにおける効率的な観測情報収集法 周波数の利用状況を精度よく認識する協調スペクトラムセンシングのための効率的な情報収集法を開発した。本手法は、従来の通信方式とは異なり,複数ユーザが自由度1の無線リソースを共有する。この場合,ユーザ間の干渉が問題となるが、電力制御と位相制御により干渉の問題を軽減した。これにより,従来から問題とされて来た協調スペクトラムセンシングの情報収集のコストを大幅に削減できることが出来た。 4:周期定常性を用いた新しいスペクトラム利用状況の識別法 周期定常性を用いた環境認識法の検討も行った。従来のスペクトラムセンシングではあるスペクトラムがプライマリユーザによって利用されているか、そうでないかの判別を行って来た。これに対して本手法では、スペクトラムが誰にも利用されていない、プライマリユーザによって利用されている、セカンダリユーザによって利用されている、両ユーザによって利用されていることを明らかにすることが出来る。
|