平成22年度は、既に申請者が提案していた、従来捨てていた測定結果を用いた通信路推定手法を、推定に用いる標本の大きさが有限である場合に従来手法とくらべて性能が向上するかどうか明らかにした。具体的にはBB84プロトコルをdepolarizing通信路およびamplitude damping通信路において用いた場合に、depolarizing通信路では提案手法が従来手法に劣るものの、amplitude damping通信路では標本の大きさが1000万のときに提案手法は従来手法よりも10%程度高い鍵レートを達成することを確認した。提案手法は、鍵レートを算出するために従来手法とは異なり凸最適化問題を解く必要があるが、この凸最適化問題をバリア法で解くために必要な計算量を実際にプログラムを作成して確認した。最適化の計算は、13変数のニュートン方程式を100回程度解くだけで済み、実用上まったく問題ない計算量であることがわかった。また、従来手法と同じ測定結果だけを用いる通信路推定において、区間推定の方法を変更することによって、鍵レートを向上できることも明らかにした。これらの結果をJournal of Physics Aの2010年12月号にて報告した。
|