研究概要 |
本研究では,低密度な検査行列を畳込み符号の構造を持たせて設計される誤り訂正符号であるLDPC畳込み符号の能力評価手法として,重み分布の効率的な計算手法を開発した.LDPC畳込み符号は優れた復号特性を示し,かつ符号化,復号コストが少ない利点を有することから近年注目されている誤り訂正符号である.しかしながら,その復号特性を理論的に評価することは難しく,一般的に通信路をモデル化した復号シミュレーション(数値実験)によって評価されている.本研究で開発した手法は,LDPC畳込み符号の復号特性の理論的評価を可能にするパラメータである重み分布(あるハミング重みを有する符号語の数の分布)を高速に計算する木探索アルゴリズムである.LDPC畳込み符号の検査行列から作成される符号木において,復号特性評価で重要となる最小自由距離周辺の重み分布に含まれる符号語を効率的に探索し,その符号語数を計数する.LDPC畳込み符号の符号木は符号語を生成する際の内部状態と次の状態へ推移するパスで構成される.本手法はLDPC畳込み符号の特徴である検査行列に着目し,符号木の内部状態と生成している符号語の重み増加を関係付け,その関係を利用することにより,探索対象外である符号語となり得るパスを早期に打ち切ることによって,木探索アルゴリズムの計算量を削減させている.これまでに提案されている幾つかのLDPC畳込み符号に対して本手法を適用し,重み分布を計算することに成功した.
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