研究概要 |
本研究では,LDPC畳込み符号の能力評価手法として,重み分布の効率的な計算手法を開発することを目的としている.LDPC畳込み符号は疎な検査行列を畳込み符号の構造を持たせて設計される誤り訂正符号であり,拘束長(メモリサイズ)を十分大きくして検査行列を設計することによって,優れた復号特性が得られる.しかしながら,そのような符号の重み分布を求める計算量は大きく,理論的な能力評価が難しくなる.平成22年度は,LDPC畳込み符号の重み分布を計算する木探索アルゴリズムを開発した.開発したアルゴリズムは,疎な検査行列から作成される符号木の特徴に着目し,計算コストを削減している. 平成23年度は,LDPC畳込み符号の重み分布計算のための木探索アルゴリズムの計算コストを削減することを目的として,前方探索と後方探索を組み合わせた重み分布計算手法を開発した.前方探索と後方探索の組み合わせは畳込み符号の性質によって実現可能であるが,LDPC畳込み符号の場合メモリサイズが非常に大きく,記憶するノード状態が膨大になるため,後方探索で記憶するノード状態の管理方法を工夫し,前方探索におけるノード状態の比較方法を効率化することによって,計算速度への負荷を軽減させた.開発した計算手法をいくつのLDPC畳込み符号に適用し,平成22年度に開発した方法に比べて,大幅に計算時間が短縮できることを確認した.また,これまで重み分布の計算が困難と予想されていたメモリサイズの大きなLDPC畳込み符号に対して,本手法を適用することにより,重み分布の導出に成功した.
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