研究概要 |
大規模WDM網において,光信号劣化(Physical layer impairment)を考慮して光パスを設定することは,重要な研究課題の一つである.また,光信号劣化に加えて,サービス差別化・公平性改善を実現することも必要不可欠であるが,そのような動的光パス設定方式は未だ確立されていない.この主な原因として,分散制御環境では大規模WDM網全体の情報を使用できず,網内の限られた情報のみを用いて光パスを設定しなければならない,などが挙げられる.そこで本研究では,光信号劣化を考慮して光パスを設定するために,強化学習を用いた動的光パス設定方式を提案する. 初年度の平成22年度は,提案方式で強化学習を使用するために,強化学習の状態集合・行動集合・報酬関数を定義した.このとき,GMPLSコントローラと強化学習コンポーネントのインタフェースを確立できるように工夫を行った.確立した強化学習を利用することで,提案方式をGMPLSと容易に連携させることが可能になり,提案方式が将来的に広く利用されることが期待できる.本方式の性能をシミュレーションで評価し,方式の有効性とパラメータの効果を調査した.さらに,この方式に対して光パス棄却率に関するサービス差別化とホップ数に関する不公平性改善を実現する機構の導入を試みた.この機構の導入では,強化学習の状態集合にサービスクラスと経過ホップ数に関する情報を導入している.この方式の性能をシミュレーションで評価し,方式の有効性と各ノードの学習時間を調査した.シミュレーション結果から,提案方式を用いることで,特定の条件下においては光信号劣化と公平性・サービス差別化を実現できることが示された.その一方で,特定の条件下以外では,方式の効果が不十分であるため,さらなる方式の改善が必要不可欠であることが判明した.
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