研究概要 |
センサーネットワーク向けのユニバーサルなデータ圧縮法を開発するため,初年度は情報源符号化に関する基礎的な検討を行った.時々刻々と変化する情報を扱う場合には,情報源が定常性やエルゴード性を満たさない情報源モデルを考えることが必要になる.そこで,本研究では定常性やエルゴード性を仮定しない一般的な情報源に対するユニバーサル符号が存在するための条件について研究した.まず,情報源が1つだけの場合については,定常性やエルゴード性の仮定を外すと,従来は同等と考えられてたユニバーサル性の定義の違いが重要になり,ユニバーサル符号が構成できるための条件はその定義に依存することを明らかにした.また,可変長のユニバーサル符号が存在すれば,それを利用して固定長のユニバーサル符号を構成できることを明らかにした.この結果については第33回情報理論とその応用シンポジウムで発表した.さらに,複数の情報源を対象にする場合についても検討を行い,ある条件(情報源の集合が可分であるという条件)下では,最尤復号法と同程度の性能を達成する最適なユニバーサルな復号法を構成できることを明らかにした.この結果は論文として電子情報通信学会論文誌に投稿しており,現在査読中である.さらに,既存研究に関する調査・検討も行い,いくつか新しい成果を得ることができた.とくに,無歪みの多端子情報源符号化問題に対するHanとKobayashiによって示された結果をGray-Wyner型符号化問題に対しても適用できることを示し,HanとKobayashiの結果から得られる一般的な達成可能レート領域の内界は,この問題についてはタイトな内界を与えていることを証明した.この結果については電子情報通信学会情報理論研究会で発表した.
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