研究概要 |
センサーネットワーク向けのユニバーサルなデータ圧縮法を開発するため,初年度の情報源符号化に関する基礎的な検討に引き続き,無歪みの多端子情報源符号化に関する研究を行った.一般情報源に対する可変長ユニバーサル符号から固定長ユニバーサル符号を構成するための手法に関する初年度の成果を元に,2対1のネットワーク通信における一般情報源の情報源符号化問題について検討し,この問題に対してもユニバーサルな可変長符号が存在するならば,それを利用することでユニバーサルな固定長符号を構成できることを明らかにした.この成果については,the 7th Asia-Europe Workshop on Concepts in Information Theory(AEW7)で発表した.一方,実用的な符号を構成するためには,符号長が有限の場合における誤り確率の評価が重要になる.そこで,本研究では,符号化・復号化によって生じる誤り確率と符号長とのトレードオフを明らかにするための指標である冗長度の解析を行った.とくに,2対1のネットワーク通信における情報源符号化の冗長度について検討し,以下の成果を得ている.(1)片方の符号器の符号化レートが十分に大きい場合について検討し,Hanらによって確立された情報スペクトル的手法にBernsteinによる確率論の結果を組合わせるだけで,冗長度に関するタイトな上界を与えることができることを明らかにした.(2)片方の符号器がヘルパーとして働く場合について検討し,主情報を符号化する符一号器の冗長度およびヘルパーの冗長度に対する理論的な上界を与えた.これらの成果については,それぞれ電子情報通信学会情報理論研究会と第34回情報理論とその応用シンポジウムにおいて発表を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,復号器における復号結果が元の情報と完全には一致しないことを許容するかわりに通信量をより削減するため,有歪み符号化の問題を検討する.本研究でこれまでに得られた無歪みの場合の成果を元に,ネットワーク通信における有歪みの情報源符号化,とくに,ユニバーサル符号の構成方法について研究を推進する.
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