センサーネットワーク向けのユニバーサルなデータ圧縮法を開発するため,多端子情報源符号化に関する研究を行った.まず,昨年度に引き続き,符号化・復号化によって生じる誤り確率と符号長とのトレードオフを明らかにするための指標である冗長度の解析を行った.とくに,2対1のネットワーク通信における情報源符号化の冗長度について検討し,以下の成果を得た.(1)片方の符号器の符号化レートが十分に大きい場合について検討し,Hanらによって確立された情報スペクトル的手法にBernsteinによる確率論の結果を組合わせるだけで,冗長度に関するタイトな上界を与えることができることを明らかにした.(2)片方の符号器がヘルパーとして働く場合について検討し,主情報を符号化する符号器の冗長度およびヘルパーの冗長度に対する理論的な上界を与えた.これらの成果は,IEEE International Symposium on Information Theory (ISIT2012) および International Symposium on Information Theory and its Applications (ISITA2012) で発表した.更に今年度は,歪みを許容する一対多の符号化問題についても研究した.特に,対数歪み測度の下でのHeegard-Berger問題を研究し,補完情報伝送問題と呼ばれる特別な場合について,達成可能領域を明らかにした.この成果は電子情報通信学会情報理論研究会で発表した.
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