研究概要 |
前年度は,配信コストを考慮した従量制VOD形IP放送におけるユーザ効用最大化や事業者収益最大化について議論してきた.平成23年度では,IPTVフォーラムが提案するサービスモデルを基準に,それぞれのサービスに対するユーザの視聴行動モデルを構築した.さらに,それらのサービスモデルに対応する課金方式について検討し,ユーザ効用や事業者収益を最大化する料金設定を明らかにした.サービスモデルについては,これまで提案してきた配信サービスをIPTVフォーラムが提案する四つのサービスモデルに再分類した.そして,VOD形とストリーミング形の配信ネットワークについて,品質保証の観点から両者の特徴を明らかにした.料金設計に必要な課金方式については,代表的な課金方式のほか,ダウンンロードしたコンテンツに対する課金形態について検討した. 平成23年度の具体的な成果として,CDNを用いたVOD形の視聴行動モデル,ダウンロード形の視聴行動モデル,ストリーミング形のIP放送サービスにおける視聴行動モデルを構築した.また,VOD形のIP放送サービスについては,シミュレーションによりユーザ効用を最大化するための条件を明らかにした.次の検討として,ダウンロード形の配信サービスにおける料金設計について,ユーザ効用や事業者収益を最大化する料金設計を明らかにする.料金は利用者に直接関わるものである.料金は低ければ低いほど良いように感じるが,通信トラヒックの集中を招くことがある.サーバのオーバロードやネットワークの混雑は,スループットの低下につながる.適切な料金設計は,事業者収益を増加させるだけでなく,ユーザが享受するサービスの品質を守ることにもなる.本研究は,事業者並びにユーザの両者を満足させるための料金設計の提案であり,ここに本研究の意義がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定として,本年度は料金モデルを提案し,ユーザ効用が最大となる料金設計の条件を示すこととしていた。実際には,VOD方式,ストリーミング方式のユーザ行動モデルを提示し,収入を最大化する料金設計の指針を示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
ユーザ行動モデルについて更なる検討を行い,より実際に近いモデルを構築する.さらに,最終年度に向けて,ユーザ効用を最大化する料金設計を示す.また,事業者の収益も考慮し,ゲーム理論のナッシュ均衡点から両者が妥結できる料金について検討する.
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