ボルト締結においては,ボルト-ナット間のネジ山接触面や,ボルトと締結体との接触部により,非線形超音波が発生することが考えられる.また,ボルトを締結することにより,ボルトが塑性変形するため,塑性変形でも非線形超音波が増加することが予想される.本研究では,超音波の非線形効果を利用して,ボルト-ナットの締結状態の検査法の新しい分野を開拓することを目的としている. 本年度は,特にボルトの形状に非線形超音波の発生が影響するかどうか検討した.昨年までの実験では,直径が12mmのボルト(M12)を用いていた.今年度は直径を6mm~10mm(M6~M10)まで変えて検討した.その結果,2次高調波が発生することが確認できた.一方,軸力の増加に伴って2次高調波も増加する現象は,M12のように明らかに増加する現象が確認できなかった.この原因として,ネジの直径が変化することによりネジ山の接触面積が変わるため,非線形振動を起こす面積も変化していると考えられるためである.この点については,次年度以降に引き続き検討する予定である. また,本実験を行う上で,超音波探触子と試料の接触面においても2次高調波が発生してしまう.この2次高調波はボルト締結評価において不要な成分であり,発生を抑制する必要がある.この手法として,ガラス同士を接着させて2次高調波抑制を試みた.その結果,4MPa程度の圧力を接触面に印加することで40dB程度の2次高調波の低減が可能であることがわかった.さらに,高分子接着フィルムで接着することにより50dB程度低減できた.今後は,これらの手法を用いて探触子の接着を試みる予定である.
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