研究課題
本研究課題の目的は、ヒト血管内皮機能情報分析のために簡易な画像計測システムを試作・開発し、血管拡張・収縮性の非侵襲イメージングを実現することである。本年度の研究では、はじめに、皮膚表面の曲面形状による照明ムラを補正するために、RGB値をLab色空間へと変換し、明度L値の空間的な不均一性を補正した上で再びRGB値へと逆変換する新しい独自のアルゴリズムを考案し、画像解析プロセスに実装した。また、メラニン様色素と馬存血を用いた人工皮膚モデルを作成し、酸化・還元血液濃度の定量性を確認した。次に、ラット背部有形皮弁の基底部を5~50mmHgの圧力で圧迫・解放可能な新規な動物実験モデルを開発し、正常群とSTZ投与I型糖尿病発症群に対して実験を行った。血管拡張性指標である動脈血流入量と静脈容量はI型糖尿病発症群で低下することが明らかになり、提案システムにより糖尿病により減弱した血管内皮機能を経皮的に計測・画像化できる可能性が得られた。さらに、ヒト上腕部圧迫-解放に対する血液量変化を連続的に画像計測し、動脈血流入量、静脈容量、静脈血流出量、反応性充血のリカバリー時定数の画像化を行った。画像内関心領域の画素平均値と平常時の収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数、脈圧を比較した結果、特に動脈血流入量と脈拍数および反応性充血のリカバリー時定数と拡張期血圧との間の相関係数はそれぞれr=-0.47およびr=0.84であり、血管の拡張性が低いほど心拍数が高く、拡張期血圧が高いほど、血管の拡張・収縮性が低く、反応性充血後のリカバリーに時間を要するという結果が得られた。提案法により得られた結果と従来法であるストレンゲージプレチスモグラフから得られた結果は良い相関を示すことを確認した。以上により、RGBカメラを基盤とした血管拡張・収縮性の非侵襲イメージングが実証され、新しい血管内皮機能分析法の可能性が得られた。
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Journal of Biomedical Optics
巻: Vol.16 ページ: 086012-1-086012-14
DOI:10.1117/1.3613929
Optics Letters
巻: Vol.36, No.16 ページ: 3239-3241
DOI:10.1364/OL.36.003239
http://www.tuat.ac.jp/~bmp-mpg/index.html