自然界に存在する地磁気を用いた高感度な地磁気核磁気共鳴NMR装置を開発することを目的として、生体試料、水溶液、食品等に含まれる水素原子核の検出感度向上を目指した研究を行なった。初年度である本年度は、以下に示す項目を実施した。1.NMR信号は、磁場の不均質性により、信号の線幅が増加し、信号強度が減少するため、NMR検出磁場である地磁気の均質性をモニターすることは重要である。従来技術では、計測したNMR信号より不均質性を評価しているが、本研究では異方性磁気抵抗センサーを用いた計測法を開発した。2.磁場の均質性を向上するため、XYZ方向の磁場補正が可能な勾配コイルを設計し、水素原子核NMR信号の線幅を2Hzまで減少させることが可能となった。また、このことから、実験室内において地磁気の磁場均質性が鉄筋等の磁性体により歪んでいる場合においてもNMR計測が可能となった。3.本年度開発した地磁気NMR装置による液体検査への可能性について評価した。飲料、可燃物、危険物等の様々な液体におけるNMR緩和時間を計測した結果、高磁場でのNMR緩和時間より、地磁気(低磁場~50uT)において、液体の種類による緩和時間の変化が大きいことを確認することができた。このことより、地磁気NMRを用いた液体検査の可能性について示せた。この技術により、容器内の爆発物、危険物等を非破壊で検出することが可能となるため、安全安心な社会の構築にとって役立つことが期待できる。また、第49回NMR討論会において、地磁気NMRの開発とその応用に関する成果を発表し、大学院生が若手ポスター賞を受賞した。
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