研究概要 |
本研究では,平成22年度に予定していた研究内容のなかで,1)実データによる周波数による偏波回転角の影響調査と,2)回転角の逆回転による散乱特性の変化の理論的な検討,の二つを主に調べた.1)に関しては,L-band帯のPALSARで調べた場合,都市域と山間部で分散が小さい偏波回転角が観測できた.一方,C-band帯のRADAR-SAT2では,都市域のみで分散が小さく,偏波回転角を観測できた.そこで,分散などの統計量で回転角のデータにおける有意性を判断できることが確認できた.2)に関しては,Freemanらの三成分分解の論文を元に,偏波回転角を受けた表面散乱・2回散乱・体積散乱のCovariance行列と,回転が受けない場合のCovariance行列を求め,それら差を導出した.この結果を元に,さらに粒子群最適化を用いて表面散乱と2回散乱の偏波回転角の影響が大きい場合の三成分分解法を検討した.但し,体積散乱が一様分布である場合は,表面散乱と2回散乱のみが偏波回転角の影響を受けるとの仮定を考慮した.解析結果は,Freemanらの三成分分解法で従来体積散乱が主の散乱メカニズムと推定された偏波回転角が大きい都市域で,提案方法では2回散乱が主の散乱メカニズムとの異なった結果となった.都市域では,体積散乱が発生しにくいため,偏波回転により従来のモデルに考慮できない影響が解析結果に生じていたと思われる.但し,粒子群最適化を利用しているため,ノイズによる影響を大きく受ける.そこで,ノイズの影響を低減することが新たな課題として生じた.
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