研究概要 |
本研究では,マイクロ波偏波合成開ロレーダによる陸域に注目したデータ解析法の検討を行った。偏波データ解析法では,偏波行列データを散乱メカニズムに対応したモデル行列毎に分解する方法が注目されている。しかし,このモデル行列は,自然植生を基にしており,都市域には当てはまらない。そこで,自然植生域と都市域を総合的に取り扱う解析方法が必要となる。この研究では,研究代表者が既に提案した都市域のモデル行列を自然植生のモデル行列と組み合わせるため,主に都市域と自然植生を区別する方法を検討し,偏波回転角シフトを利用した。 本年度は,都市域と自然植生の散乱行列の特性と偏波回転角の特性を調べるために,共分散行列を固有値分解した行列に対して,有井らが提案する行列分解の手法を基に,個々の散乱メカニズムの行列の要素と回転角を推定することを試みた.固有値分解は,モデルを用いない行列分解法である.その結果,固有値分解した個々の散乱メカニズムの共分散行列でも,自然植生と都市域で回転角の違いが確認できた.自然植生では回転量が少なく,都市域では回転量が大きくなった.また,回転角の分布の広がり度も併せて調査し,自然植生では広がり度が大きく,都市域は小さくなった.これは,モデルによる行列分解法のコンセプトと同じ結果であり,検討してきた方法が妥当であることを確認できた.これらの結果は,ALOS/PALSAR (L-band)とRadarSAT-2 (C-band)と両方のデータからも,同様な結果が得られた.よって,昨年度検討したデータ解析方法が,多周波の偏波SARデータに利用可能であり,汎用的に利用できることを確認した.
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