本研究課題は、平成24年度では、消散的な2次元階層化ネットワークシステムの同定とその手法を導く最終目的のために、前年度の結果をより深く掘り下げる考察を行った。具体的には、(i)1次元階層化ネットワークシステムの同定と平成25年度への繰り越し課題として(ii)2次元システムの消散性の特徴付けの2つのサブテーマを遂行した。 (i)では、サブシステムが均質である階層化ネットワークシステムに対して、サブシステムとネットワーク構造の両方を同時に同定する理論的な結果を与えた。この成果は、国際会議American Control Conference 2012にて発表した。 (ii)では、平成25年9月に金沢大学金子修准教授の下に滞在し、ビヘイビアアプローチの観点から2次元システムの消散性の特徴付けに関する議論を行った。その結果、2次元システムの消散性と無損失性に関して、消散不等式・方程式を用いた特徴付けを得た。この結果は、従来研究によって困難と考えられてきた2次元システムのスペクトル分解に関する問題点を解決したことによるものである。また、システム同定の観点以外でも、ビヘイビアアプローチによる2次元システムの観点からもオリジナルな結果を与えている。この成果は、国際会議The 21st International Symposium on Mathematical Theory of Networks and Systems(2014年7月にオランダ・グローニンゲン市にて開催)に採録決定となり、現在論文誌に投稿する準備中である。 しかし、(i)と(ii)の成果を組み合わせることによる消散的な2次元階層化ネットワークシステムの同定については、理論的に完成に至らなかった。この点に関しては、今後の研究において解決されなければならない。
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