研究概要 |
本研究の目的は,拘束条件を考慮した有限整定制御理論を一般化セクター条件により新たに構築することにある.有限整定制御とは,誤差を有限時間内に零に整定する制御であり,一般化セクター条件とは,拘束条件付アクチュエータの高効率稼動を実現する条件である.本研究により,搬送台車等の機械系に対する,高速・高精度稼働,拘束条件の達成,近年問題であるCO2削減のための低エネルギー稼働等の相反する要求を両立する制御方式を構築できる.さらに,実機実験を通して,一般化セクター条件に基づく有限整定制御の実装方式を検討する. 平成22年度には離散時間系に対する設計条件の導出と組込み系の制御対象に対する実装方法を検討した.理論的な成果としては,整目標値信号の整形と制御器の設計という統合設計問題を半正定値計画問題に帰着することができた.これにより,拘束条件を達成しつつ,従来よりも目標値信号に対する整定時間の短縮を実現することができた.実装面での成果としては,制御器がH8マイコン上に実装される位置決め実験機に対して,路面状況により稼働状態を自動的に変更するトルクコントロールアルゴリズムを提案した.これにより,有限整定を達成しにくい路面状況において,余計なエネルギーロスを発生させることなく,位置決めが実現できるようになった. また,組込み系に対する実装時の問題として,制御対象の非最小位相特性とアクチュエータとセンサの解像度荒さに制御誤差が大きく依存することが判明した.この問題に対処するために,制御誤差の最小化と制御系の安定化を同時達成する動的量子化器の設計を新たに与えた.この際,動的量子化器の設計問題も半正定値計画問題に帰着することができた.
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