研究課題/領域番号 |
22760320
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西村 悠樹 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (20549018)
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キーワード | 最適制御 / 非線形制御 / 安定論 / 正準量子化 / 確率過程 / 超音波モータ |
研究概要 |
非線形最適レギュレータ問題を解決するには正準方程式の2点境界値問題を解くかHJB方程式を解く必要があるが,Lyapunov安定論の方向から解析を進めるならば後者の方が有利である。しかし,HJB方程式は非線形偏微分方程式なので一般解を得ることが困難である。更に,宇宙ロボットのような非ホロノミックシステムの最適制御問題においては不連続解が許容されなくてはならないため,近似解の構成方法が問題となっている。本研究では,不連続制御則を許容する非線形最適レギュレータ問題の新しい近似解法を得るため,HJB量子化と確率過程量子化を組み合わせることを試みている。 まず,HJB量子化手法の理論的な曖昧さについて検討し,非線形無限時間最適レギュレータへの適用可能性について研究発表を行った。更に,次年度で行う予定の超音波モータを用いた提案手法の実機実験への適用の事前準備として,制御Lyapunov関数に基づく符号の反転しないスライディングモード制御を超音波モータに適用し,その有用性を実機実験により示した。非線形最適レギュレータを導くHJB方程式の正定解は制御Lyapunov関数として考えることができるため,提案手法が完成した際には超音波モータ実機への適用可能性が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,不連続制御則を許容する非線形最適レギュレータ問題の新しい近似解法を得るため,HJB量子化と確率過程量子化を組み合わせることを主目的とするものである。 本年度の成果の一つは,HJB量子化手法の理論的な曖昧さについて検討し,非線形無限時間最適レギュレータへの適用可能性について研究発表を行ったことである。これにより,本年度計画の主目的である「HJB量子化に対する新しい近似解法の提案」はおおむね達成されているものと考えられる。 また,本年度計画では球面型超音波モータの実機製作が挙げられていたが,現在所有している一軸回転型超音波モータに改良を施すことで提案手法の有用性を確認することができるとの結論に達したため,当該実験装置の駆動ドライバの改良および制御機構の新規構築を行った。 以上により,本年度はおおむね計画通りに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため,提案手法の有用性を実機実験によって確認する必要がある。提案手法の有効な改良のためには,次の三つの課題が挙げられる。 一つ目は確率システムの安定性についての更なる解析である。つまり,提案手法の保証する安定性がどのようなものであるのかを明らかにしなければならない。 二つ目は確率システムの安定化をより高速に達成する手法が求められる。これの達成により,提案手法が実用的な収束速度を持つようになるものと考えられる。 三つ目はまた超音波モータのより実際に即した制御モデルを構築することである。これの達成なくして実機実験での有用性は判定できないだろう。 以上を行った上で,超音波モータのサーボ制御により提案手法の有用性を確かめたい。
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