| 研究概要 |
「微分包含式」と呼ばれるある種の特殊な方程式は数学的に特異な性質を持ち,力学系のモデル化やスライディングモード制御(SMC)の理論において有用である.しかしその特異性のため,デジタル計算機やデジタル制御系においての利用は簡単ではなかった.本研究では新しい近似手法「微分代数包含式近似」にもとづき,微分包含式の新しい工学的利用法を探索した.平成22年度は下記の成果を得た.
【1】放物線型スライディングモードフィルタのパラメータ設定の指針を明確にした.
平成21年度にノイズ除去のための新しいデジタルフィルタを考案したが,平成22年度にはそのフィルタの特性を定量的に明らかにし,実装のための指針を示した(学術論文として投稿中).
【2】位置制御系における放物線型スライディングモードフィルタの有効性を示した.
位置制御系において位置センサのノイズ除去のために上述のフィルダを利用することで,位置制御の性能が向上することを実験的に示した(学術会議にて発表).
【3】力制御にわけるSMCの応用可能性と有用性を示した.
微分代数包含式近似を施したSMCは平成21年度までは位置制御にのみ用いてきた.平成22年度は,力制御においてもそれが利用可能であって,かつ有用であることを示した.(学術会議にて発表)
【4】摩擦や接触を含む力学系のための新しいシミュレーション手法を確立した.
摩擦や接触を含む力学系は微分包含式で表現できるが,微分代数包含式近似によって,それをより数値的に取り扱いやすい常微分方程式に変換できることを示した(学術論文として投稿中).
【5】PID制御された剛体リンク系の各種安定性を数学的に証明した.
微分代数包含式近似を施したSMCは,SMCとPID制御を結合した制御則でもある.本成果は,微分代数包含式近似にもとづく位置制御の妥当性を理論的に裏付けるために有用である(学術論文として採録決定).
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