ネットワーク社会における情報圧縮の重要性から,信号の量子化に関する研究は古くからなされている.無線通信機器を用いた遠隔手術などではネットワークを介して得た信号を用いて制御するが,通信容量が有限であるため,通信を介さない場合と比べた制御性能の劣化が生じる.これに対して,動的量子化器を用いた信号データの圧縮は,データの丸め(量子化)に起因する制御性能劣化が少ないものとして知られるが.通信容量の制約を陽に満たすことを前提とした量子化手法は従来考えられていない.本研究はこの解決を目的として遂行している. H23年度までは印加される入力uの信号クラスを特定せずに設計手法を構築するが,H24年度はクラスが限定される場合の量子化器設計を行なった.信号の周波数などのクラスがあらかじめわかっている場合にはわからない場合と比べてよりよい制御性能を満たす量子化器の構築が期待される.例えば遠隔手術では,手先の動きは遅く印加信号uには高周波成分を含まないと想定され,このような枠組みでの量子化器の設計も重要課題であると考えられる.このような解析・設計手法の構築方法を提案し,その有効性を数値シミュレーションで解析した.さらに,音声信号の圧縮実験を行い,提案手法の有効性を検証した.
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